マナビDX Questの参加記録の続きです。前回の記事は以下を参照してください。
2023年度の「マナビDX Quest」に参加することにしました。 マナビDX Questというのは、経済産業省が開設したデジタル人材育成のためのプログラムです。実践的なケーススタディや地域企業との協働を通じて、デジタル技術の活用や[…]
前回の記事ではマナビDX Questの申し込みから開会式までの経験をお伝えしました。今回は、実際のプログラムにおける前半戦の体験をご紹介します。
PBL教材の選択
前回の記事で掲載した図を再掲しますが、第1タームはProject-Based Learning(PBL)を通じた学習で、受講生は2種類の教材から選択します。
(引用元:https://dxq.manabi-dx.ipa.go.jp/)
私自身にとっては本業に役立ちそうな「教材2」も魅力的でしたが、「教材1」を選びました。私はデータサイエンティストではありませんが、AIモデル構築と、同じ課題に取り組んだ優秀なモデルを作成した人々のアプローチを学ぶことに強い興味があったためです。
というのも、私が何度か参加したSIGNATEのコンペでは上位者がどのような解法を採っていたのかが気になっていたものの、基本的にはそれを知る術がありませんでした。しかしこのマナビDX Questでは上位者の解説が聞けるため、その欲求を満たせると考えたからです。
プログラムの概要
私が選択したプログラム(PBL)は、次のようなものでした。
- 期間: 2023年8月19日に開始し、10月28日の最終発表会で終了。約2ヶ月間の学習期間した。
- 内容: 架空の企業が直面する問題に対し、AIモデルを構築して解決策を提案。最終的には企業の経営陣に向けてプレゼンを行いました。
- 進め方: 全6つの課題を通じてスキルを習得。各課題には期限があります。
- コミュニケーション: Slackをメインのコミュニケーションツールとして使用し、受講者間での相互支援やアドバイスが行われました。
- 競争要素: 一部の演習ではスコアを競う形式を採用。上位者の解説を聞く機会があり、モチベーションの向上に寄与しています。
- 修了証: 全課題を期限内に提出するとGold修了証が、期限後でも最終日までに提出すればSilver修了証が獲得できます。修了証は第2タームへ進むための条件となります。
私自身の取り組みと感想
次に私自身の取り組みと感想についてお話しします。
目標
まず、第一タームを始めるにあたって以下の2つの目標を立てました。
- Gold修了証を取得すること
- スコアを競い合う演習では極力上位を目指すこと
運営側の動機づけの仕組みにそのまま乗った形になるわけですが、第2タームの企業との協働はぜひやりたかったので修了証を取るしかありません。そして締め切りを守るかどうかだけの違いならちゃんと守ってGoldを取得する方がいいだろうと思いました。
また、コンペ形式の演習は本気で取り組んで競い合った上で、それでも敵わなかった人たちの解法や考え方を聞く方が確実に実力につながると思い、このような目標にしました。
結果
まず1つ目の目標ですが、無事に全演習課題を期限までに提出でき、Gold修了証を受け取る権利を得ました。
そしてスコア競争では、AIモデル作成では全体が約500人の中で55位、プレゼン資料では23位と頑張っただけの結果を残すことができたと考えています。これらを合わせた総合順位では14位に入り優秀賞を獲得することができました。
また、予想していた通り上位者の解説は非常に有益でした。この点だけでも、受講の価値があったと感じています。
難易度
全演習課題を期限通りに提出することは実はそんなに難しくはありません。というのも主に初心者に向けて解答例が用意されていて、それを参考にして少しアレンジすれば課題を提出できてしまうからです。
それでもわかなければ、Slackで質問すればたいていは翌日までには回答が返ってきます。
よって仕事が忙しい人でも、やる気さえあればまずクリアできるものと考えもらってよいです。
もちろん上位を目指そうと思うと努力は必要になりますが、提出だけなら正直誰でも可能だと思います。
私の取り組み方
私の取り組みの最大の特徴はChatGPTをフル活用したことです(今回は公式に使用してOKでした)。特にスコアが関連しない提出課題はほぼChatGPTに任せて片づけていました。
私は有料のGPT4を活用しましたが、課題の内容をそのまま入力しても適切な回答が得られるので、その後ChatGPTとのさらなる対話を通じて、自分なりの修正を加えるだけで演習課題をクリアすることができました。
一方スコアを争う課題では、締切日までの時間を目いっぱい使って上位を目指しました。回答は1日に5回まで投稿できるのですが、AIモデル作成はSIGNATEのコンペ同様リアルタイムで暫定順位が確認できるため、修正と投稿を繰り返してできるだけ上位を目指しました。
またプレゼン資料は提出後に他の受講者のレビューで順位が決まりますが、できるだけ良い資料にできるように完成後も何度か見直して再提出しました。
このうちAIモデルの生成もChatGPTには大いに助けてもらいました。inputデータを丸投げしてデータの可視化・解析・特徴の説明などを行ってもらい、それを受けてモデルを作成する過程でも日本語で指示を投げてコードを作成してもらうなど使い倒しました。
こうして振り返るとChatGPTの影響がかなり大きかったと思います。
取り組み時間
事前説明では週6時間以上が必要ということでしたが、こちらは演習課題によってまちまちでした。
上で述べたようにスコアが関連しない課題はChatGPTにほぼ任せていたので、1~2時間で終わることが多かったです。ChatGPTが今後の時代に大きな変革をもたらすであろうことを体験できる良い機会になりました。
一方でスコア評価される課題には平日毎日1~2時間、土日は倍の時間を割いて取り組み、週に約10~15時間を費やしました。
もっとも初回の課題公開時に全課題が公開されるので、それを見越して重い課題を早めに取り組むことで、特定の週に負荷がかかり過ぎることを防げます。またスコア上位にこだわらない限りはここまでの時間は必要ないので、週6時間も必要がない人も多いとは思います。
得たもの
私が選んだPBLは、正直なところAIモデル作成については使用できるデータがかなり少ないケースだったので、機械学習の実践訓練という意味ではやや物足りなかった感はあります。
ただ、やはり上位者の解法によって、意味のある特徴量をどうやって増やしていけるかという点で多くの気づきをもらえましたし、またAUTO MLが非常に有用だということを知ることができました。
そしてプレゼン資料については今後の仕事において役立つサンプルをたんさく見ることができたので、今後にとって得たものは大きかったです。
あとは聞けば誰かが親切に答えてくれるSlackでのコミュニケーションも有益だったと思います。私は質問は1回しかしなかったのですが、投稿されている質問と回答を見るだけでも演習を進める上での理解を深めることができました。また、「おすすめの本」や「プレゼンのコツ」などは専用のスレッドが立っていたのでかなりありがたく参考にさせていただきました。
第2タームに向けて
第2タームでは地域企業協働プログラムがあり、これへの参加こそが私がマナビDX Questに参加した最大の理由でもあるのでぜひ参加したいと考えています。
第1タームの終盤にはチーム組みが始まっていて、事務局からチームを組むためのお見合いの場が設定されたり、チーム組成用のスレッドが立ち上がったりします。
私も無事にチームに参加することができ、今は協働をしたい企業を選んでいるところなのですが、チーム数に対して企業希望数が少ないので組めない可能性もあります。その時は第2タームにも第1タームとは別のPBLが用意されているので、そちらに全力で取り組みたいと考えています。
次回は
企業と協働ができた場合にはその感想を、できなかった場合には第2タームのPBLを受講した感想を共有したいと思います。